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感染症について

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類になって2ヶ月が経過しようとしています。2類から5類になって大きく変わったことのひとつが、医師の届出義務が大幅に縮小されたことです。2類感染症は感染症法上診断した医師に速やかな報告を義務付けており、私どもも実際に全ての患者さんについて報告を行っていました。もともとは「全数把握」といって、感染患者さんの氏名、年齢、性別、住所、電話番号、発症日、症状、検査確定の検査、基礎疾患の有無など多項目の報告が義務付けられていましたが、昨年の第8波の頃には医療機関ごとに年齢別の患者発生数のみ報告するだけに簡略化されました。おかげで医療機関の負担は大幅に軽減され、それまで発生届の報告に診療時間終了後何時間もかかっていたのが、ほんの数分で済むようになりました。この方法であっても、少なくとも全ての医療機関で診断した患者数は集計されていたので、数日のタイムラグはあるとはいえ、現在の流行状況が誰にでもわかるようになっていました。

ところが、5類に変わった5月8日以降は、全ての医療機関に義務付けられていた「全数把握」がなくなり、各地域で選定された「定点医療機関」で週毎に発生した患者について報告するだけになりました。この方法はこれまでもインフルエンザなどの感染症で行われてきた方法です。1週間の定点医療機関毎の患者数の発表は1週間後に行われる(熊本県のホームページ)ので、これまでのようなリアルタイムでの流行状況はわからなくなってしまいました。これまではしつこいくらいに毎日の感染者数を報道してきた新聞・テレビなども最近はほとんど報道していません。

こんな状況ですが、最近新型コロナ感染症その他の感染症が増えていることを皆さんはご存じでしょうか?

5月連休直後の感染者数よりも定点毎の患者数が増えているのが、新型コロナ、RSウイルス、ヘルパンギーナ、感染性胃腸炎などです。新型コロナについては、連休直後の4倍以上に増えています。新型コロナは今、第9波のまっただ中だと言えるでしょう。インフルエンザに関しては、6月になったというのにまだまだ感染者数が減っていません。この傾向はいままでにはなかったことだと思われます。新型コロナは終わったわけではありません。

なぜ、この暑い時期になっても感染症が減らないのでしょうか?諸説ありますが、おそらく3月13日以降のマスクは個人の判断になった、ということと、5月8日の新型コロナが5類になったことで、国民の間に妙な安ど感が生じたためではないかと思います。マスクについては、あくまでも「個人の判断」ということであるにもかかわらず、「マスクを外せ」と政府が言っている・・・という誤解。5類になったから「インフルエンザと同じになったから軽くなった」という誤解。5類感染症になったというのは、あくまでも行政が分類を変更しただけであって、感染力や重症化の度合いが軽くなったということではありません。ちなみに「すれちがっただけでも感染する」というほど感染力の強い「麻しん」も、感染したら80%以上が死に至る「クロイツフェルト・ヤコブ病」も5類です。同じ5類感染症であるインフルエンザにしても、決して「軽い風邪」ではありません。毎年多くの方が亡くなる感染症なのです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、まだまだわからないことだらけの感染症です。変異のスピードが速く、多彩に変化しているので、これからどのように変わっていくのか見当もつきません。ここ3年でワクチンや抗ウイルス薬が登場してはきましたが、どのくらいの効果があるのかも未だはっきりとはわかりません。しかし、感染症対策の基礎中の基礎は、感染者との接触をできるだけ少なくし、曝露されるウイルス量を減らすことです。それが「三密の回避」に他なりません。

私達のクリニックでは、これまでと同様に感染者あるいは感染の疑いがある方の診療も継続して参りますが、感染症以外の患者さんにクリニックで感染させてしまわないように、時間的・空間的な動線の分離を続けていく方針です。来院いただく方々にはどうぞご理解をたまわりまして、ご協力をよろしくお願いします。

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